CP&X Monthly Report 2026年8月号
- 17 時間前
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| Title |
勢い度分析による産業景気と株価のサイクル
| vol |
2026年8月号
CP&X Investment Research
主席シニアアナリスト
Senior Analyst
黒澤 真
Makoto Kurosawa
| Date of Issue |
8/04/2026
Ver:20260804-1

勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。
<セクター勢い度と産業景気の勢い度>
全8セクターが上昇
勢い度分析26年8月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業26年6月速報をベースに算出)は全8セクターが上昇となった。前月が鉄鋼、紙パルプの2セクター以外が前月比下落となったことの反動増の要素もあるが、全8セクターの勢い度が上昇となるのはまれであり、直近では2024年10月統計以来となる。なお、24年10月は5セクターが続伸となる中での動きであったが、今般は中東情勢の緊迫化、ホルムズ海峡の封鎖による原油・ナフサなどの市況急騰の中での動きであり、24年10月とは様相を異にする。
8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は512.8㌽と前月比130.4㌽の大幅な上昇となった。産業景気の勢い度が500㌽台に高まるのは24年7月統計以来となる。3月、4月にはホルムズ海峡の封鎖による原油・ナフサの調達難、市況の先高懸念による駆け込み需要が発生し、それへの在庫対応もあり需給が改善したが、5月には原油備蓄の活用と代替調達の進展から生産が正常化に向かう中で市況急騰の影響やサプライチェーンの一部での生産停滞から需要の反動減が生じた。6月には需要が回復する中で米国・イランの和平交渉が進展と停滞を繰り返すのに呼応する格好で変動の激しい動きとなっている。
鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が▲2.0%から+2.7%となり、在庫指数は▲5.0%から▲2.7%と4ヵ月ぶりに出荷増・在庫減となり、出荷・在庫循環も調整最終局面の象限Ⅰから回復象限のⅡに移っている。セクター別では電子部品・デバイスだけが出荷指数で前年同月比増加を維持し、プラスチック製品、窯業・土石、紙パルプ、非鉄、金属製品、機械、電機、輸送用機器が出荷増を回復したが。繊維、化学、情報通信機械が引き続き出荷減となった。

<ポジティブ製品>
化学、非鉄で値上げ前の駆け込み需要、光ファイバー製品が持ち直しに
出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、不織布、紙パルプ、新聞紙、非塗工印刷用紙、キシレン、スチレンモノマー、ポリプロピレングリコール、アクリロニトリル、フェノール樹脂、塩ビ樹脂、ふっ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、工業用ゴム製品、プラスチック機械器具部品、プラスチック建材、鋼半製品、小形棒鋼、特殊鋼熱間鋼管、普通鋼冷延電気帯鋼、電気金、アルミ板製品、アルミはく、ばね、安全ガラス、タイル、ファインセラミック(構造材)、研削砥石、コンクリート管、コンクリートパイル、汎用内燃機関、建設用クレーン、研削盤、普通乗用車、電動工具、デジタルカメラ、乾電池、リチウムイオン蓄電池、分析機器、ムーブメントなどであった。
生産・出荷が好調(前年比10%超の増加)であった製品をピックアップすると、キシレン、アクリロニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、合成洗剤、プラスチック製パイプ、プラスチック製機械器具部品、銑鉄、アルミ板製品、アルミ押出製品、機器用絶縁電線、光ファイバー製品、ガス温水給湯暖房器、産業用アルミ製品、ガラス短繊維製品、ファインセラミック(構造材)、炭素製電極、特殊鋼切削工具、汎用内燃機関、ガス・水道メーター、精密測定器、分析機器、ロジック半導体、固定コンデンサー、電子回路基板、電子回路実装基板、エアコン、リチウムイオン蓄電池、乾電池、半導体・IC測定器、産業用テレビ、小型乗用車、ショベルトラック、航空機機体部品・発動機部品、ピアノ、管楽器などであった。
<ネガティブ製品>
エチレン、ナフサがまだ2桁減、パソコンが悪化
出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、情報用紙、純ベンゼン、二塩化エチレン、合成アセトン、H形鋼、普通鋼鋼帯、特殊鋼冷間仕上げ鋼材、数値制御旋盤、冷蔵庫、薄型テレビ、システムキッチン、管楽器などであった。
生産・出荷が低迷した(前年比10%超の減少)製品をピックアップすると、再生・半合成繊維、エチレン、プロピレン、トルエン、合成アセトン、エチレングリコール、二塩化エチレン、ブタジエン、合成ゴム、フェノール、ポリビニルアルコール、ナフサ、日焼け止め化粧品、鋼矢板、特殊鋼冷間仕上げ鋼材、石油ストーブ、メモリー半導体、混成IC、装輪式トラクター、印刷機械、ポンプ、コンベヤ、電気がま、冷蔵庫、デスクトップPC、ノートPCなどであった。
<勢い度のサイクルと株価>
勢い度サイクルが下支えも、ボラタイルな相場環境が継続か
株式市場は6月末にかけて米国・イランが停戦に向けての覚書に署名したことを受け和平への期待が一気に膨らむも、調停が不調に終始し再交戦の動きから原油市況が再上昇となり、AI・半導体関連ではAIサーバーへの過剰投資懸念や中国半導体企業が台頭してきていることへの懸念の再燃などによりボラタイルな相場となった。日経平均株価は月末終値ベースで4ヵ月ぶりに下落となった一方、TOPIXは4ヵ月連続の上昇となった。リスク回避の動きからこれまでの上昇が急峻な銘柄を中心に調整色が強まる反面、出遅れ銘柄への物色が強まった結果でもある。この1ヵ月のパフォーマンスは日経平均が前月末比8.14%の下落、TOPIXが同0.21%の上昇となったが、TOPIX業種別株価指数で前月末比上昇したのは、鉄鋼の+13.03%をトップに輸送用機器の+10.08%、紙パルプの+8.69%、繊維の+1.63%の4セクターで、これらはファンダメンタルズからは優位性が見られない業種であり、消極的な銘柄選択の結果でもあり、これまで指摘してきたように物色銘柄がセグメントを超えた隠れAI・半導体関連にも広がった証左でもあろう。

“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行うものであるが、足元の状況は株価の底打ち・回復局面の象限Ⅰ~Ⅱを往来している状況でモメンタム面からの過熱感はない状況にある点から見れば、株価上昇の下支え要因となる。
ただ、4~6月決算の発表が進行中であるが、その特徴として石化関連、化学企業を中心とした半導体・電子材料の収益依存度の高い企業や、半導体、電子部品、半導体製造装置などのIT関連企業の4~6月期の営業利益が期初計画以上に好調であり、中間期や通期の業績予想を上方修正する企業が多い。その要因としてはホルムズ海峡封鎖鎖に伴う原料・燃料高の価格転嫁が順調に進展しており、価格上昇を見越した前倒し需要により数量も堅調に推移していることが寄与し、加えて想定以上に前年同期比で円安が進展したことによる利益押し上げ要因も大きい。
このような中で相場付には変化がなく、決算内容よりはガイダンスの強弱に大きき依存する状況にある。中東情勢の動向がどちらにも転ぶ可能性のある不安定な状況が続く可能性が高い状況が予想され、株式相場はボラタイルな動きが続く可能性が依然、高いと言えよう。

<勢い度分析による投資戦略>
AI関連を中心とした循環物色がベースであることに変化はない
製造工業生産予測指数から見ると、6月の予測指数の実現率は▲3.2%と5月の▲1.7%から悪化した。6月の実現率がプラスであったのは鉄鋼と化学の2セクターのみであり、電子部品・デバイスの▲16.9%、石油製品の▲4.2%、非鉄の▲3.2%などが見通しに比べ悪い結果となり、駆け込み需要などの趨勢から読み違えた可能性も高い状況にある。今後の見通しは7月が前月比+1.2%(従来0.0%)、8月が同+4.5%と堅調な見通しになっている。8月にかけて化学、鉄鋼、非鉄、機械が強含み基調、輸送用機器が横ばい、紙パルプと金属製品が弱含みの見通しとなっている。
米国テック大手はAI関連投資計画を増額しており、その債務拡大(4年で約4倍)へのリスクが懸念され始めているが、AI半導体の最大の受託企業である台湾のTSMCのコメント「AI需要は2030年まで強固」を借りるまでもなく、関連企業の収益モメンタムに大きな問題はない。特に日本企業が過半のシェアを持つ、AI半導体製造や生成AIサーバー構築に使用される部材は米国テック大手の投資スピードに全くと言っていいほど追い着いていない。AIサ-バー関連部材では蓄電デバイス、積層セラミックコンデンサー、データセンター間の光ファイバーによる接続部材など電子部品の需要に対応するための増強投資が決定したばかりであり、その新設能力が本格的に寄与するのは2030年前後となる。
デバイスメーカーの手持ち在庫の調整もあり回復が遅れていた半導体シリコンウエハーは、」4~6月に需給が一気に好転し始めている。信越化学工業とSUMCOの日系2社で世界シェアの6割を占め、特に高精度が要求される先端AI半導体の製造に必要な300ミリエピタキシャルウエハーでは世界シェアの8割を占めると見られるが、今後の需要増に対応するデバイスメーカーとの長期契約(台湾のグローバルウエハーズはSKハイニックスと10年契約を結ぶ)の交渉は今後の増強コストの上昇を見極めつつ慎重に交渉を始める段階にある。
当面はAI関連が、好業績を背景に持たざるリスクを意識されることから相場の主役であり、その交替は当面なさそうだ。

補足:“勢い度”分析とは
鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。
縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。
8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。
(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)
留意事項
本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。



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