CP&X Monthly Report 2026年6月号
- 13 時間前
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| Title |
勢い度分析による産業景気と株価のサイクル
| vol |
2026年6月号
CP&X Investment Research
主席シニアアナリスト
Senior Analyst
黒澤 真
Makoto Kurosawa
| Date of Issue |
6/02/2026
Ver:20260602-1

勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。
<セクター勢い度と産業景気の勢い度>
4セクターが上昇、産業景気の勢い度は400㌽超での2ヵ月連続上昇に
勢い度分析26年6月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業26年4月速報をベースに算出)は全8セクター中、繊維、紙パルプ、窯業・土石、電機・精密の4セクターが上昇し、非鉄が横ばいとなり、化学、鉄鋼、機械・輸送用機器が下落となった。
8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は462.3と前月比23.0㌽上昇となった。産業景気の勢い度が400㌽を2ヵ月連続で超えるのは約1年ぶりとなる。この主因は在庫率の改善であるため、あまりポジティブな状況ではない。米国・イスラエルのイラン攻撃に伴うホルムズ海峡封鎖による原油高、石化製品を中心とする供給懸念に伴う前倒し需要を一部在庫で対応した動きがプラスチック製品、繊維のほか、ナフサ由来の原料を使用しないセクターでも垣間見られ、生産・出荷は伸び悩みとなり在庫で対応した結果、在庫率の低下も寄与している側面もある。
鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+2.4%から+2.3%となり、在庫指数は▲5.3%から▲4.9%となったことから、出荷・在庫循環も2ヵ月連続で回復初期の象限Ⅱとなり、回復感を高める結果となった。セクター別では出荷指数が前年同月比プラスに転じたのは繊維と窯業・土石の2セクターだけであり、機械、電子部品・デバイス、電機、情報通信機械が好調を持続し全体を押し上げるも、鉄鋼、非鉄、紙パルプが出荷減に転じている。化学、金属は出荷減少を継続し、自動車が横ばいに後退というミックスの状態となった。このため生産指数が前年同月比+2.4→+2.3%と出荷指数同様に伸び悩みとなっている。在庫率指数が同4.7%減となったことでモメンタムを押し上げる格好ともなっている。

<ポジティブ製品>
再生・半合成繊維、印刷インキ、トランジスターや光ファイバー製品が良化
出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、再生・半合成繊維、不織布、塗工印刷用紙、段ボール原紙、印刷インキ、プラスチック製フイルム・シート、プラスチック製建材、H形鋼、特殊鋼冷間仕上げ鋼材、亜鉛、光ファイバー製品、アルミ製建具、食缶、ガラス長繊維製品、不定型耐火物、炭素製電極、炭素繊維、サーバー用パソコン、複写機、エアコン、冷蔵庫、デジタルカメラ、トランジスター、メモリー半導体、ロジック半導体、乾電池などであった。
<ネガティブ製品>
アルミ製板製品、伸銅製品が悪化
出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、か性ソーダ、ベンゼン、パラキシレン、フェノール、合成アセトン、石鹸、プラスチック製機械器具部品、粗鋼、普通鋼鋼帯、普通鋼冷延電気鋼帯、特殊鋼熱間鋼管、電気銅、電気金、アルミ製板製品、伸銅製品、気泡性コンクリート製品、板ガラス、装輪トラクター、機械プレス、自動車用電気照明器具、軽乗用車、フォークリフトトラック、二輪車、標準変圧機、電子応用玩具、システムキッチンなどであった。
原油・ナフサ由来の不足下での供給・需要動向~塗料、インキは出荷増に
石油・ナフサ関連の動きでは、ナフサの供給量は3月が前年同月比24.4%減→4月が同22.9%減となり、プラスチック原料のエチレンの出荷量は同様に49.1%減→39.6%減、プロピレンが同様に38.8%減→35.4%となった。その一方でシンナー関連のトルエンは同様に21.1%減→67.3%減となり、プラスチックのポリエチレンが同様に13.6%減→5.4%減、ポリプロピレンが同様に7.7%減→35.4%減となり、ポリスチレンは同様に2.5%増→0.7%減であった。石化製品は川上の原料工程~樹脂工程ではエチレンプラントが3月と4月に大型定期修理に入っており、稼働率は史上最低水準とならざるを得ない中で在庫での出荷対応、需給状況を鑑みた製品対応と、厳しい状況が浮き彫りになっている。4月後半以降は原油・ナフサの調達拡大に加え、定期修理明けのプラント再稼働もあり、稼働率は80%程度に向けて徐々に高まる見通しでる。
石油由来製品の中でもガソリンは補助金を背景に前年並みの出荷となっており、ジェット燃料、灯油、重油も需要に対応した出荷状況にある。半面、エチレン由来製品は在庫消化を除くと6月までの充足率は8割程度と試算される。ただ、値上げ前の前倒し需要も需給をタイトにしている側面もある。シンナー不足が言われる溶剤系樹脂塗料の出荷は前年同月比14.1%増、印刷インキの出荷も同4.7%増と堅調であり、プラスチック製フイルム・シートの出荷は同7.5%増、複合肥料の出荷も同21.2%増と、値上げ前の駆け込み需要があることが明白な状況となる。
メーカーの最終製品に近い川下工程では駆け込み需要に対する在庫等での対応によって潤沢な供給がなされている。さらに流通過程では駆け込み、売り惜しみの動きが助長されることがあると推察せざるを得ない状況となる。
<勢い度のサイクルと株価>
先行きのリスクを無視する相場には懸念も
株式市場は中東情勢の緊迫化による原油市況高に伴うスタグフレーションのリスクの高まりも1ヵ月で回復基調となり、2ヵ月連続の新高値更新となった。日経平均株価が前月末比11.88%の上昇と2ヵ月で40%近い上昇となり、TOPIXは同6.17%の上昇と2ヵ月で13%弱の上昇の半面、時価総額の大きな銘柄への集中投資がさらに進んだ格好となった。相場の先導役はAI関連に変わりはないが、その範囲が光ファイバー関連から半導体、コンデンサーなどの電源関連部材やロボットなどフィジカルAI関連に広がってきている。
“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行うものであるが、足元の状況は株価の回復局面の象限Ⅱに2ヵ月連続で入っている点からは株価上昇の下支え要因となるが、それ以上に決算内容よりはガイダンスの強弱やトランプ大統領の発言に一喜一憂しつつも買い上がる米国型の“瞬間沸騰型”相場形成の要因が大きいと言わざるを得ない。
4月統計でも勢い度の改善に駆け込み需要が寄与した一過性の要因もあり、鉱工業出荷・在庫循環が持続的に象限Ⅲ~Ⅳの拡大局面へと移行し、産業景気の勢い度が上昇と循環的な収益・株価上昇の相関関係を回復するかどうかの見極めがまだ必要である。加えて、各業種とも26年度の業績ガイダンスはリスクを考慮して公表を控える企業や、増益ガイダンスを公表するも中東情勢の影響を織り込んでいない企業が多い。コストアップは上昇要因の理解度の高さからほぼ価格転嫁ができる想定だ。米国とイランの和平交渉が実現するにしても原油・ナフサの高止まりは不可避な状況にあり、期中に和平が成立し、原油・ナフサが軟化すると現状で打ち出されている価格転嫁の未達率が大きくなり、在庫評価次第では業績にネガティブに作用する。26年度後半には数量の懸念ではなく採算面でのリスクの高まりによる業績下方修正を考慮する必要があろう。“瞬間沸騰型”相場が逆噴射となると下落も大きくならざるを得ないであろう。

<勢い度分析による投資戦略>
半導体・電子部品材料の供給は順調、AI関連主導は変わらず
製造工業生産予測指数からみると、4月の予測指数の実現率は▲2.6%と3月の▲1.4%からはやや悪化となった。製造業は中東情勢の動向を慎重に見ていたが、やや楽観的な側面が出始め、今後の見通しは5月が+5.1%、6月が▲0.4%となっている。
政府によれば原油・ナフサは中東以外からの調達により27年初めまでの量は確保できたとのことだが、ホルムズ海峡の実質的封鎖が長期化する公算が高く、中東の原油関連設備の復旧には数年かかるとのことで、市況高は当面続くことになる。駆け込み需要の反動減と相まって世界需要の低迷によるスタグフレーションに陥るリスクも拭い切れない。
そうした中での唯一の明るさはAI・半導体関連需要となる。4月の半導体、電子部品関連材料はナフサ由来製品でも優先的に部材供給がされている模様であり、エポキシ樹脂の出荷が前年同月比8.9%増となり、ポリアミド系樹脂成形材料の出荷が同1.3%減にとどまるなど相対的に堅調な動きにあり、この動きを裏付ける格好となっている。
米国テック大手はAI関連投資計画を増額しており、AIデータセンター関連の需要増の煽りを受け不足状態となり、市況が急騰した汎用DRAMの増産と相まって半導体大手は27年~28年の稼働に向けた新増設投資を拡大している。不足状態にある光ファイバーの出荷は前年同期比39.0%増と高い伸びになったが、その原料となる合成石英のプリフォームに対する引き合いも急増しており、関連部材の潜在的需要の大きさを物語っている。AI関連が業績や株価の牽引役であることは変わりそうにない。


補足:“勢い度”分析とは
鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。
縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。
8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。
(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)
留意事項
本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。

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