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CP&X Monthly Report 2026年11月号

4 時間前
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Title

勢い度分析による産業景気と株価のサイクル

vol

2026年11月号

Analyst

CP&X Investment Research 主席シニアアナリスト(Senior Analyst) 黒澤 真(Makoto Kurosawa)

Date of Issue

11/02/2026

Ver

20261102-2



 


CP&X 勢い度レポート 11月(イチョウ)


  勢い度分析は鉱工業統計(速報)に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクター及び企業の収益、関連市況のモメンタムを比較・分析するものです。これに合わせ株価を相対的に割高か割安かの比較分析を加えセクターアロケーション、銘柄ピックアップの一助となることを目指す筆者のオリジナル分析であり、これまで所属した内外証券会社の調査部において30数年に亘り、毎月算定し発行してきました。なお、勢い度の算出方法及び見方は最終ページに記載していますのでご参照ください。



<セクター勢い度と産業景気の勢い度>


6セクターが下落、産業景気の勢い度は2ヵ月連続の下落

勢い度分析26年11月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業26年9月速報をベースに算出)は化学が前月比横ばいとなり、電機・精密が上昇したが、残る6セクターが下落となった。前月に上昇した繊維、紙パルプ、鉄鋼の3セクターが反落となり、自動車などで7月28日の令和8年熊本地震の影響から脱したが、中東情勢の悪化による一部製品での前倒し需要の反動や、メモリー半導体の不足からスマホやタブレットの関連需要低迷の影響もあり、生産・出荷のモメンタムが前年比では伸び悩みとなったことが背景にあるとみられる。


8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は383.6㌽と前月比77.9㌽の低下となった。産業景気の勢い度は2ヵ月連続の前月比下落となり、4ヵ月ぶりに400㌽を下回る結果となった。


鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+1.5%から+0.2%に減速し、在庫指数は▲2.0%から+0.1%と在庫増に転じた。7月、8月と2ヵ月連続で出荷増・在庫減となり出荷・在庫循環では回復象限のⅡにあったが、当月には拡大成熟局面の象限Ⅳと辛うじて好循環を維持したが、モメンタムは減速している。在庫増は市況高もあり意図した増加とみられるが、在庫率指数が前年同月比+2.9%と、前月は▲1.9%であった状況から悪化しており、今後の動向を注視する必要がある。


セクター別では輸送用機器が出荷増に転じ、電子・デバイス、電機、機械と合わせ4セクターがプラスとなったが、プラスチック製品が出荷▲1.6%と減少に転じ、素材セクターは全て出荷減となった。中東情勢の緊迫化後の市況先高懸念から原・燃料高、輸送コスト高に伴い多くの素材製品市況が上昇しており、前倒し需要の反動、需要減速の影響が否定できない状況が垣間見える。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度と産業景気の勢い度の推移(2026年11月号)
図1 セクター勢い度と産業景気の勢い度の推移

<ポジティブ製品>


素材は一部で前倒し需要の反動から在庫増となり良化製品が減少

出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、綿・毛織物、不織布、ニット製品、製紙用パルプ、複合肥料、フェノール、合成アセトン、ブタジエン、石けん、プラスチック機械器具部品、プラスチック製容器、不定型耐火物、炭素製電極、ファインセラミックス(構造材)、触媒担体・セラミックフィルターなどであった。


生産・出荷が好調(前年比8%超の増加)であった製品をピックアップすると、ベンゼン、合成アセトン、二塩化エチレン、ふっ素樹脂、H形鋼、機器用絶縁電線、光ファイバー製品、建設用クレーン、印刷機械、鋳造装置、化学機械、プラスチック加工機、半導体製造装置、超硬工具、ダイヤモンド工具、産業用ロボット、金型、汎用内燃機関、空気圧機器、コンベヤ、工業用計重機、精密測定器、線形IC、ロジック半導体、トランジスター、電子回路基板、電子回路実装基板、掃除機、エアコン、温水洗浄便座、半導体・IC測定器、デジタルカメラ、産業用テレビ装置、航空機用機体部品、航空機用発動機部品、ムーブメントなどが挙げられる。


<ネガティブ製品>


エチレン、プロピレン、鋼半製品、ガラス短繊維など主要素材の需要が減速

出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、合繊短繊維、紡績糸、合繊長繊維織物、染色整理、織物製外衣、非塗工印刷用紙、紙器用板紙、エチレン、カーボンブラック、ポリプロピレングリコール、パラキシレン、スチレンモノマー、ポリカーボネート、プラスチック製パイプ、プラスチック強化製品、鋼半製品、小形棒鋼、普通鋼熱間鋼管、普通鋼冷延電気鋼帯、ばね、石油ストーブ、産業用アルミ製品、ガラス短繊維製品、タイル、遠心力コンクリートパイル、道路用コンクリート製品などであった。


生産・出荷が低迷した(前年比8%超の減少)製品を挙げると、合繊短繊維、合繊長繊維織物、染色整理、新聞用紙、非塗工印刷用紙、情報用紙、鋼半製品、鋼矢板、小形棒鋼、普通鋼鋼帯、特殊鋼冷間仕上鋼材、酸化チタン、エチレン、プロピレン、トルエン、キシレン、エチレングリコール、アクリロニトリル、スチレンモノマー、フェノール、パラキシレン、ポリスチレン、塩ビ樹脂、ポリビニルアルコール、ふっ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、合成ゴム、塗料、界面活性剤、ナフサ、プラスチック製パイプ、プラスチック製建材、強化プラスチック製品、電気銅、電気金、アルミ製建具、石油ストーブ、産業用アルミ製品、板ガラス、複層ガラス、ガラス短繊維製品、道路用コンクリート製品、電気用陶磁器、ファインセラミックス(圧電機能素子)、装輪式トラクター、機械プレス、FPD製造装置、繊維機械、エレベーター、複写機、カメラ、メモリー半導体、冷蔵庫、アルカリ蓄電池、デスクトップパソコン、ノート型パソコン、小型トラック、電子・電動玩具などであった。


(注)出荷・在庫循環の象限移動による良化、悪化製品の記載は素材産業だけとし、加工・組み立て産業は生産・出荷の増減での記載としています。


<勢い度のサイクルと株価>


勢い度でも株式相場の成熟度の高まりを示唆

中東情勢が膠着状態となる中で10月20日にはWTI原油価格が5ヵ月ぶりに1バレル110ドルを超え、インフレ懸念が更に高まったことを受け世界的に金利上昇リスクを意識する展開となり、10月の株式市場も一進一退の膠着状態から、先導役であったAI・半導体関連株が調整基調となり軟調な展開となった。日経平均株価が3ヵ月ぶりに前月末比5.19%下落し、TOPIXも同3.49%の下落となった。


業種別TOPIXでみると、前月末比上昇となったのは精密の+8.55%、化学の+2.18%、窯業・土石の+6.95%と、前月の鉄鋼のみから3業種に増加した。出遅れでディフェンシブ関連への循環物色となり、先行したAI・半導体関連株が調整局面となる中で、信越化学など半導体材料関連の27/3中間期決算の発表が始まり、業績が堅調であったことに加え、素材製品だけではなく電子・半導体材料も価格是正が進んでいることが表面化してきたことなどが、短期的には株価にプラスに作用した側面もある。そうした中でも、スマホやPC・タブレット向けの部材を供給しており、それらの収益貢献度が大きいメーカーはAI関連など非モバイル向け需要でカバーし、中間期までの業績は好調であったが、下期以降の業績見通しに慎重なことが懸念材料となり株価が急落する銘柄も散見され、全体相場の調整基調を強めた側面もある。


“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行うものである。6月統計まででは株価、収益モメンタムの底打ち・回復局面となる象限Ⅰ~Ⅱを往来していたが、7月統計で回復から拡大局面に入り、8月統計ではやや後退していた。当月の9月統計では在庫増となり、拡大基調も成熟局面の象限Ⅳと好循環を維持したが、遅ればせながら株価のピークアウトを示す結果となった。


CP&X勢い度レポート 産業景気の勢い度と株価(2026年11月号)
図2 産業景気の勢い度と株価

<勢い度分析による投資戦略>


相場のリーダーはAI関連に変わりないが、地政学リスクの高まりを警戒

製造工業生産予測指数からみると、9月の予測指数の実現率は+2.9%と8月の▲8.8%からは大幅な改善となった。9月の実現率は電子部品・デバイスが+26.0%となったのを筆頭に、前月に▲21.6%となった機械セクターが+11.1%、輸送用機器が+2.1%となり、これら3セクターが全体の実現率プラスに貢献している。残るセクターは石油化学を筆頭に未達となった。今後の見通しは10月が前月比+5.1%(従来+3.2%)、11月が+0.8%と堅調な見方にある。機械が工作機械の受注拡大を背景に好調を持続し、電子部品・デバイスや電線などの入る非鉄、化学セクターもAIサーバー関連部材の引き合いが来27年に向け一段と高まるプレガイダンスもあり、強気な見通しにある。


生成AI用半導体やAIサーバーの投資・開発による成長期待が、多方面の需要を巻き込む好循環による強いモメンタム相場を形成してきた。ここに来て一部の企業において、AIの暴走やAIデータセンター投資額の急増を背景にフリーキャッシュフローがマイナスとなり収益の重しとなり始め、今後の投資拡大での外部資金調達需要の高まりから、金利の圧迫要因による悪循環が懸念され始めている。日本企業が過半のシェアを持つAI半導体の製造や生成AIサーバーの構築に使用される部材は、米国テック大手の投資スピードに全く追い付いていない状況であり、毎月、世界の半導体出荷額が前年比倍増のペースで拡大する方向にある中ではAIサーバー関連需要による利益成長性にはまだ影響がない状態である。株価は海外市場動向の影響を受けるが、それも相場の本流であることには変わりはないであろう。リスク要因としては中間選挙後の米トランプ大統領の中東情勢への対応や、米中露の超大国連携への動きなど地政学的リスクが高まる相場が27年初めにかけて続く可能性があることになる。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度と株価指数(2026年11月号)
図3 セクター勢い度と株価指数(実線が株価、点線がセクター勢い度)

CP&X勢い度レポート 株価指数と業種別TOPIXの推移(2026年11月号)
図4 株価指数と業種別TOPIXの推移

(出所)CP&X、日本経済新聞



補足:“勢い度”分析とは

鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。

縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる回復・拡大サイクルのボトムとなる。

CP&X勢い度レポート 収益モメンタムサイクル
図5 勢い度のサイクル(収益モメンタムサイクル)

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。

8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。

(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)

 

留意事項

本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。


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