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CP&X Monthly Report 2026年3月号

  • 1 日前
  • 読了時間: 9分

| Title |

勢い度分析による産業景気と株価のサイクル


| vol |

2026年3月号

  

CP&X Investment Research

主席シニアアナリスト

 

Senior Analyst

黒澤 真

Makoto Kurosawa

 

| Date of Issue |

3/03/2026

 

 

Ver:20260303-1


 


CP&X 勢い度レポート


  勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。



<セクター勢い度>

繊維が反落も、鉄鋼、機械・輸送用機器が回復

勢い度分析26年3月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業26年1月速報をベースに算出)は全8セクター中、繊維が下落となったが、残る7セクターが上昇となった。前月は6セクターが上昇したのに続き堅調な動きとなった。電子部品・デバイス、半導体製造装置を含めた産業機械の輸出需要が好調であったことが背景にある。米国関税政策の影響が7月末には相互関税分の一律15%への引き下げで合意した心理面での緩和による側面もあるが、繊維、化学、鉄鋼、非鉄・金属と汎用素材の荷動き、自動車の輸出を含めた出荷には力強さはなかった。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度

<産業景気の勢い度>

8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は398.1と前月比65.7㌽の上昇となった。産業景気の勢い度の動きからも、25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が25年6月統計で下げ止まりとなった後は底這い状況が続き、回復感が出にくい状況にあったが、トランプ関税の動向の影響から脱し、再び回復経路を登り始める兆しが見えてきた。

鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+1.3%から+2.0%と2ヵ月連続の増加となり、在庫指数は▲2.8%から▲4.2%となり、出荷・在庫循環では2ヵ月連続で回復初期の象限Ⅱと回復感が再び高まった格好にある。セクター別では電気機械、電子部品・デバイスと産業機械の出荷指数だけが連続増となり、素材セクターの出荷指数は前年同月比減少基調にあり、素材セクターも含めAI関連需要に依存する偏った状況にあり、先行きは予断できない状況にある。

 

<ポジティブ製品>

研削砥石が良化、光ファイバー、固定コンデンサー、電子回路基板などが好調

出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、染色整理、ニット製製品、ブタジエン、エチレングリコール、カプロラクタム、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、界面活性剤、アルミニウム板製品、電力用電線・ケーブル、光ファイバー製品、石油ストーブ、産業用アルミ製品、セメント、衛生用陶磁器、研削砥石、道路用コンクリート製品、農機具、普通乗用車、二輪車、セパレート型エアコン、電動工具、トランジスター、ガスメーター、分析機器、ムーブメントなどであった。

こうした中で、生産・出荷が増加(前年同月比+8%超)した製品をピックアップすると、中形棒鋼、光ファイバー、ガス湯沸し器、産業用アルミ製品、架線金物、ファインセラミックス(パッケージ、圧電機機能素子)、炭素製電極、キシレン、エチレングリコール、ポリビニルアルコール、ムーブメント、管楽器、シャープペンシル、ボールペン、装輪式トラクター、農機具、ショベル系掘削機、化学機械、マシニングセンター、超硬工具、ダイヤモンド工具、繊維機械、産業用ロボット、精密測定器、固定コンデンサー、電子回路基板、リチウムイオン蓄電池、電気測定器、ノートパソコン、二輪車、航空機用機体部品、航空機用発動機部品などとなる。

 

<ネガティブ製品>

エチレン、合成ゴムが悪化、製紙用パルプ、タフテッドカーペットが減速

出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、再生・半合成繊維、合繊長繊維織物、エチレン、純ベンゼン、合成アセトン、ポリカーボネート、合成ゴム、石けん、溶剤系塗料、複合肥料、特殊鋼冷間仕上げ鋼材、電気銅、機器用絶縁電線、セメント板、専用機、研削盤、サーバー用パソコン、電子応用玩具、システムキッチン、繊維板・パーティクルボードなどであった。

こうした中で、生産・出荷が減少(前年同月比10%以上)した製品をピックアップすると、銑鉄、粗鋼。鋼矢板、特殊鋼熱間鋼管、電気銅、亜鉛、複層ガラス、コンクリートパイル、気泡コンクリート製品、塩素ガス、酸化チタン、石化用触媒、エチレン、純トルエン、フェノール、ふっ素樹脂、ポリカーボネート、複合肥料、製紙用パルプ、タフテッドカーペット、鋳造装置、専用機、機械プレス、一般冷凍空調用冷凍機、複写機、標準変圧器、冷蔵庫、蛍光ランプ、アルカリ蓄電池、乗用車用エアコン、ショベルトラックなどが挙げられる。

 

<勢い度のサイクルと株価>

短期的な過熱感も、勢い度からは下支え、まだ上昇の余地

26年2月の株式市場は日経平均株価が前月末比10.37%の上昇で、TOPIXも同10.44%の上昇と両指数ともに大幅な上昇となり、最高値を更新した。これで日経平均株価が3ヵ月月連続の上昇、TOPIXに至っては11ヵ月連続の上昇となる。この1年間では日経平均株価が58.39%の上昇、TOPIXが46.85%の上昇となる。資本コスト、株価を意識した経営によるPBR1倍割れの是正に向けた市場改革を背景に海外投資家からの信認回復による高値更新となり、直近では高市自民党の衆議院選挙での大勝がさらに株価を押し上げたことは言うまでもない。

この1年間の製造業の業種別株価パフォーマンスでトップは非鉄の286%上昇、第2位が機械の82.73%、第3位がガラス・土石の75.84%となる。これらの業種のパフォーマンスを支えたドライバーは生成AI関連のサーバー用光ファイバー・関連部材、フィジカルAIとAIによる産業革命的な大変革に伴う収益への貢献、その期待が現実のものとなり、収益を押し上げ始めたことは周知の事実であろう。

この動きはこの2月での株価でも顕著であり、上位3位の上昇率は非鉄が前月比47.71%、ガラス・土石が同20.08%、機械が同16.01%となっている。4位には化学の15.21%上昇、5位に繊維の14.33%上昇が入ってきている。製造業の株価指数は11業種をフォローしているが、最下位の株価パフォーマンスであった鉄鋼でも3.32%の上昇となり、1年前との比較でも最下位は鉄鋼の13.72%であり、この1年間でどの製造業に投資しても損はしなかったことになる。

“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行ってきたが、足元の状況は株価の底打ち段階の象限Ⅰから回復局面の象限Ⅱに入るところでの動きにあり、円相場が想定以上の円安であったことを除くと経験則からは上記のような株高を説明できない状況にある。ただ、出荷・在庫循環が株価の下支えとなり、長期のサイクルである産業構造の変化が株価のけん引役となる二重構造との見方もできる。

とは言え、すべての業種の株価指数が同時に上昇し、下落する業種がないという事態は異例中の異例であり、バブルがかった相場と言ってもおかしくはない。以前からも言及してきたが過剰流動性、いわゆる米国を中心とする金余りによるバブル相場が日本に波及し、ボラタイルながらも強い上昇相場を形成しているとの懸念は高まるばかりである。日経平均株価の予想PERは21倍弱まで買われ。米国のナスダック総合に次ぐ高水準になってきている点からも、その懸念は否定し難い水準に入ってきている。日本企業は政策保有株式の売却による特別利益を計上している企業も多く、実態の収益以上の当期利益、EPSに膨れ上がっている過程にある点からはなおさら懸念が高まらざるを得ない。

バブル時は株価が上がると新たにそれを正当化する要因を挙げるのが常であるが、“勢い度分析”と株価の関係性からは鉱工業出荷・在庫循環の象限Ⅲ~Ⅳへの移行に伴う産業景気勢い度の上昇による循環的な収益・株価押上げ要因への移行の余地がまだ残っていると言える余地が残っている。


CP&X勢い度レポート 産業景気の勢い度と株価





<勢い度分析による投資戦略>

中東リスクの見極め

製造工業生産予測指数からみると、1月の予測指数の実現率は▲2.5%と12月の+1.2%からは悪化となった。この動きが今後の見通しにネガティブに作用しているようであり、2月が▲0.5%、3月が▲2.6%と年度末に向けて弱含みの予想となっている。1月の実現率でプラスは電子部品・デバイスの1.9%、鉄鋼の0.2%であり、非鉄の▲4.1%、紙パルプの▲3.1%、輸送用機器の▲2.4%、機械の▲1.4%が足を引っ張る格好となった。中華圏の春節(旧正月)が1月から2月にずれたことで、春節前の需要が半導体・電子部品において12月~1月に強く出た企業が多かったことも影響しているとみられる。

この予測指数も当てにならない事態が起こってしまった。米国とイスラエルによるイラン空爆の実行である。空爆実行可能性が予想されていた中でも株価はその警戒感を微塵とも感じることなく順調に上昇してきただけに、短期的に収束するとしても株価調整のリスクは回避できないであろう。イランの報復に伴うホルムズ海峡閉鎖による原油市況の急騰は日本の景気に大きな打撃を受けることは言うまでもない。第一次オイルショック(1973年10月~77年3月)により日本の高度経済成長は終焉を迎え、第二次オイルショック(1979年1月~83年3月)でも大きな影響を受けた。物価急騰、就職難など市民生活にも混乱を招いた。

正常な状況下でも株式市場のバブルリスクが高まっていた矢先であり、当面は動向を見守るしかないが、高値更新後の最大のリスクになることだけは間違いなかろう。



CP&X勢い度レポート セクター勢い度

補足:“勢い度”分析とは

鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。

縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

CP&X勢い度レポート 収益モメンタムサイクル

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。

8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。

(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)

 

留意事項

本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。

 
 
 

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