CP&X Monthly Report 2025年12月号
- 黒澤真
- 2025年12月2日
- 読了時間: 12分
| Title |
勢い度分析による産業景気と株価のサイクル
| vol |
2025年12月号
CP&X Investment Research
主席シニアアナリスト
Senior Analyst
黒澤 真
Makoto Kurosawa
| Date of Issue |
12/01/2025
Ver:20251201-1

勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。
<8セクターの勢い度>
勢い度分析25年12月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業25年10月速報をベースに算出)が全8セクター中で上昇となったのは電機・精密の1セクターのみとなり、残る7セクターが下落となった。上昇セクター数が7月統計ではゼロ、8月統計で2、9月統計では4と増加基調にあった反動が出た格好であり、持ち直し基調に変化はない。

<産業景気の勢い度>
勢い度改善業種が増加、産業景気は回復局面入りに
4月に発表された米国の相互関税政策は猶予期間が設けられるなどの変更もあり、4~6月の国内生産活動にはポジティブとなった。特に6月統計、9月統計では前倒しの駆け込み需要などもあり押し上げ効果となったが、7月統計ではその反動減で減速し、7月末には相互関税分の一律15%への引き下げで合意しことを受け、9月にかけて様子見から積極姿勢に転じる業種・企業の動きがポジティブに作用したとみられる。
鉱工業出荷指数(原指数、前年同月比)では、出荷が▲1.3%から+2.1%と3ヵ月ぶりの増加となり、また在庫指数が▲2.9%から▲2.7%となり、出荷・在庫循環では調整最終局面の象限Ⅰから回復局面の象限Ⅱに入ってきている。セクター別では、機械、情報通信機械、自動車、化学、プラスチック製品が出荷プラスに転換し、電子部品・デバイスが出荷プラス基調を維持した。
この結果、8セクターの勢い度を単純合算した産業景気の勢い度は386.1㌽で前月比15.8㌽の上昇となり、3ヵ月ぶりに300㌽台を回復する格好となった。25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が6月統計で5ヵ月ぶりに下げ止まりから7月、8月に底這いとなり、9月は回復もスマホやパソコンなどの前倒しの効果もあることから、経済産業省は一進一退の基調判断を据え置いている。
<ポジティブ製品>
ポリアミド系樹脂成形材料が良化、光ファイバー製品が続伸
出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、染色整理、衛生用紙、紙器用板紙、か性ソーダ、カーボンブラック、窒素、プロピレン、エチレングリコール、ポリアミド系樹脂成形材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、合成ゴム、発泡プラスチック製品、プラスチック製機械器具部品、銑鉄鋳物、石油ストーブ、安全ガラス、ガラス短繊維製品、衛生用陶器、機械プレス、ダイヤモンド工具、軸受、クッキングヒーター、蛍光灯器具などであった。
こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が9%以上増加した製品をピックアップすると、織物製外衣、酸化チタン、エチレングリコール、アクリロニトリル、スチレンモノマー、合成ゴム、石けん、日焼け止め化粧品、石化用ナフサ、コークス、鋼矢板、光ファイバー製品、ガス湯沸器、超硬チップ、産業用アルミ製品、電気用陶磁器、ファインセラミックス(パッケージ)、装輪式トラクター、機械プレス、半導体製造装置、FPD製造装置、超硬工具、繊維機械、ロジック半導体、電子回路基板、プログラマブルコントローラー、基地局装置、デスクトップパソコン、ノートパソコン、小型トラック、航空機用機体部品、航空機用発動機部品などとなる。
<ネガティブ製品>
鉄鋼、建設関連の不調が目立つ
出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は綿・毛織物、酢酸ビニルモノマー、キシレン、エチレン、合成アセトン、ブタジエン、ポリプロピレングリコール、プラスチック製建材、鋼半製品、普通鋼鋼帯、普通鋼熱間鋼管、普通鋼冷延広幅鋼帯、特殊鋼熱間鋼管、ブリキ、電力用電線・ケーブル、セメント、ファインセラミックス(圧電機能素子)、炭素製電極、建設用クレーン、ショベル系掘削機、研削盤、電動工具、ビデオカメラ、トランジスター、ムーブメント、精密測定機などとなる。
こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が10%以上減少した製品をピックアップすると、再生・半合成繊維、炭素繊維、二塩化エチレン、酢酸ビニルモノマー、フェノール、ふっ素樹脂、銑鉄、鋼半製品、普通鋼冷延広幅帯鋼、セメント、耐火レンガ、炭素製電極、炭素製品、建設用クレーン、プラスチック加工機、旋盤、専用機、金型、精密測定機、カメラ用交換レンズ、リチウムイオン蓄電池、小型乗用車、軽トラックなどが挙げられる。
<セクター勢い度と産業景気の勢い度>
7セクターの勢い度が下落
4月に発表された米国の相互関税政策は猶予期間が設けられるなどの変更もあり、4~6月の国内生産活動にはポジティブとなり、特に6月統計、9月統計では前倒しの駆け込み需要などもあり押し上げ効果がでたが、7月末には相互関税分の一律15%への引き下げで合意したことを受け、9月にかけて様子見から積極姿勢に転じる業種・企業の動きがポジティブに作用した反動が出ている。
鉱工業出荷指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+2.5%から+0.8%と2ヵ月連続の増加も伸び率が縮小し、在庫指数が▲2.4%から▲1.7%となり、出荷・在庫循環では回復・拡大局面の象限Ⅱ~Ⅲへの動きから象限Ⅱに戻った動きとなる。セクター別出荷指数の動きでは電子部品・デバイス、電機が好調であったが、化学、プラスチック、金属、機械、自動車がマイナスに転じるなど鈍化・悪化となるセクターが多くみられる。米国が9月に自動車関税率を引き下げた効果が出たとの解釈が一部、報道されているが、基調済み前月比ではポジティブな動きとなることであり、原指数の前年同月比では悪化している。
この結果、8セクターの勢い度を単純合算した産業景気の勢い度は318.5と前月比67.6㌽の下落となったが、4ヵ月連続で300㌽台を維持した。25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が6月統計で5ヵ月ぶりに下げ止まりとなって7月~9月に底這い、回復経路にあったことからはやや後退したが、緩やかな回復基調は崩れていないと判断する。
<ポジティブ製品>
ポリエチレン、アルミ製品が良化、ロジック・メモリー半導体などが高伸
出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、綿・毛織物、酢酸ビニルモノマー、ポリエチレン、プラスチック製建材、鋼半製品、特殊鋼熱間鋼管、アルミニウム押出製品、電力用電線・ケーブル、ショベル系掘削機、専用機、普通乗用車、サーバー用PC、トランジスター、リチウムイオン蓄電池、ウォッチ、電子・電動玩具などであった。
こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が9%以上増加した製品をピックアップすると、合繊織物(長繊維)、石化用触媒、エチレングリコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、複合肥料、石油ストーブ、超硬チップ、産業用アルミ製品、ファインセラミックス(パッケージ)、ファインセラミックス(圧電機能素子)、装輪式トラクタ、専用機、マシニングセンター、産業用ロボット、繊維機械、汎用内燃機関、自動販売機、ロジック半導体、メモリー半導体、電子回路基板、非標準変圧器、鉛畜電池、リチウムイオン蓄電池、レーダー装置、産業用テレビジョン装置、デジタルカメラ、カーオーディオ、小型トラック、二輪車(125㏄超)、航空機用機体部品、航空機用発動機部品、舶用ディーゼル機関などとなる。
<ネガティブ製品>
光ファイバー製品、研削砥石が悪化、ノートPC、半導体製造装置などが減速
出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、合繊長繊維、衛生用紙、紙器用板紙、窒素、カプロラクタム、プロピレン、ビスフェノールA、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、界面活性剤、プラスチック製機械器具部品、プラスチック製容器、粗鋼、H形鋼、特殊鋼圧延鋼材、特殊鋼冷間仕上げ鋼材、亜鉛メッキ鋼板、光ファイバー製品、食缶、研削砥石、セメント板、機械プレス、ダイヤモンド工具、クッキングヒーター、精密測定機、掃除機などとなる。
こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が10%以上減少した製品をピックアップすると、再生・半合成繊維、合繊長繊維、炭素繊維、酸化チタン、二塩エチレン、合成アセトン、パラキシレン、ポリエチレンテレフタレート、日焼け止め化粧品、プラスチック製パイプ、製紙パルプ、新聞紙、非塗工印刷用紙、銑鉄、粗鋼、鋼矢板、H形鋼、普通鋼鋼板、特殊鋼冷延広幅帯鋼、普通鋼めっき鋼管、電気金、電気鉛、プラモデル、機器用電線、セメント、ファインセラミックス(一般構造材)、炭素製電極、炭素製品、農機用機器、印刷機械、鋳造装置、研削盤、機械プレス、半導体製造装置、FPD製造装置、金型、カメラ、混成IC、冷蔵庫、カーナビ、ノートPC、小型乗用車などが挙げられる。
<勢い度のサイクルと株価>
勢い度低下も循環物色様相もあり強気調
11月の株式市場は日経平均株価が前月末比4.12%の下落、TOPIXは同1.40%の上昇となった。日経平均株価はフジクラ、JX金属、アドバンテスト、東京エレクトロンやソフトバンクGなどのAI関連株価の急上昇による高値警戒感から小休止となったことを背景に、前月末比で9ヵ月ぶりの下落となった。半面、それに代わる出遅れ、バリュー株の見直し買いもありTOPIXは8ヵ月連続の上昇となった。相場全体ではファンダメンタルズに比べ基調は強い商状を維持しており、前月に指摘した需給相場は循環物色の様相を強めている。それは業種別株価指数の動きでみると明白で、前月末比での上昇率は窯業土石+8.54%、紙パルプ+7.95%、繊維+6.90%、鉄鋼+3.41%、化学1.73%と、上位5セクターがTOPIXをアウトパフォームし、前月までの上昇の牽引役であった非鉄が▲2.94%、電機▲2.65%、精密▲1.24%となっている。
“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価の関係性から投資判断を行っている。足元の国内産業景気は底這いから持ち直し基調の象限Ⅰを脱し、回復局面の象限Ⅱに入る好循環を形成しつつある面では、11月の相場は“勢い度分析”の動きとの連動性を高める可能性を示している。今後は米国関税政策の世界景気への影響による需要数量の減速リスクを回避して持続的な物価上昇となれば、幅広い業種・企業への収益、ファンダメンタルズの押し上げ効果が高まり、これまで指摘したような業績相場へ移行し、循環物色による持続的な株価上昇の素地が固まると、“勢い度分析”と株価の関係性も高まり、株価の長期的な上昇ストーリーを描きやすくなろう。

<勢い度分析による投資戦略>
AI関連のバリュー素材株に注目
製造工業生産予測指数からみると、10月の予測指数の実現率は▲1.7%と9月の▲0.3%からやや悪化となった。米国との関税交渉の進展により、その影響度も読みやすく、かつこれまでの想定よりも影響度が軽減するとの方向性にあることが関係しているとみられる。
生産予測指数は11月▲1.2%(従来は▲0.9%)、12月が▲2.0%となった。11月は機械が+10.1%と牽引し、鉄鋼が+2.2%、電子部品・デバイスが+0.8%でプラスの予想はこの3セクターだけであり、情報通信機器が▲9.7%、輸送用機器が▲5.2%となっている。12月は機械が▲11.2%、電子部品・デバイスが▲5.4%と底割れのリスクは限定的だが、年内回復のモメンタムの上振れも限定的となり、底這いから弱含みとなるも緩やかな回復パターンが予想される。
個別製品での動きをみると、景気の先行指標となる伸銅製品の出荷が5ヵ月連続で前年同月比プラスとなって在庫が減少に転じ、意図的な在庫の積み上がりによる象限Ⅳから拡大象限のⅢの好循環に戻った。半面、遅効性のある研削砥石が出荷+0.1%でプラスを維持したが、在庫が▲3.2%から+1.8%となり調整象限に後退している。またAI関連では光ファイバー製品が生産能力の限界による能力増強投資との挟間に入ったことから出荷+4.5%、在庫+8.9%と、意図した在庫の積み上がりから一旦は調整循環に入った格好にある。またガラス長繊維製品も出荷+4.5%、在庫+8.9%となり、AI半導体・サーバー関連部材が踊り場に入った格好となった。一方、国内の半導体工場は活況であり、ロジック・メモリー半導体の生産、出荷数量は高い伸びを維持している。AI半導体需要に対応したマイクロンのHBM、キオクシアの3D-NANDの生産拡大が寄与している。
米国ではAI関連投資の過熱感によるリスクから関連企業の株価が調整局面となり、それが日本の関連銘柄に波及する格好にある。ただ、国内のAI関連需要はサーバー構築や最先端半導体製造用部材による恩恵を受ける部分が大きく、全てのAI関連銘柄の株価が連動するのではなく、今後は収益貢献度との見合いによる棲み分けとなる公算が高いとみる。米国企業のAIデータセンターのサーバー投資は25年に約70兆円弱、前年比で60%強の高い伸びになる見込みであるが、現状で計画されている26年の投資額は30%強の伸びが見込まれている。光ファイバー製品などのように部材メーカーの想定を上回る伸びで早期の追加投資を余儀なくされる点でモメンタム減速は一時的となり、先行する企業はもちろん、これまでに無い未曾有の需要を手にする企業が多く出て来る可能性がある。サーバー関連部材、電子部品・半導体関連部材を手掛ける企業が多い非鉄、化学、窯業・土石を中心とした素材セクターがバリュー株との両面から再注目となろう。


補足:“勢い度”分析とは
鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。
縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。
8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。
(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)
留意事項
本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。



コメント