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CP&X Monthly Report 2026年2月号

| Title |

勢い度分析による産業景気と株価のサイクル


| vol |

2026年2月号

  

CP&X Investment Research

主席シニアアナリスト

 

Senior Analyst

黒澤 真

Makoto Kurosawa

 

| Date of Issue |

2/03/2026

 

 

Ver:20260203-1


 


CP&X 勢い度レポート


  勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。



<セクター勢い度と産業景気の勢い度>

鉄鋼、機械・輸送用機器を除き上昇に

勢い度分析26年2月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業25年12月速報をベースに算出)は全8セクター中、鉄鋼が下落、機械・電機が横ばいとなったが、残る6セクターが上昇となった。過去2ヵ月でセクター勢い度が上昇したのは電機・精密の1セクターと偏った動きであったが、12月は各セクターで出荷の持ち直しから勢い度が改善している。素材製品の多くで前年の出荷が回復基調となった中、秋需要が高水準であった反動もあるが、米国関税政策の影響が7月末には相互関税分の一律15%への引き下げで合意したという心理面での緩和による側面が出た格好だ。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度

鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が▲1.8%から+1.2%と2ヵ月ぶりに増加となり、在庫指数は▲4.1%から▲2.7%となり、出荷・在庫循環では回復初期の象限Ⅱに復帰した。セクター別出荷指数では電気機械と産業機械の2セクターだけが連続増となり、電子部品・デバイスが出荷増に転じている。素材セクターの出荷指数は前年同月比減少基調を継続しているが、減少率は鉄鋼を除き緩和傾向にある。

8セクターの勢い度を合算した産業景気の勢い度は333.1と前月比48.0㌽の上昇となった。前月は5ヵ月ぶりに300ポイント割れとなったが、1ヵ月で300台を取り戻す底堅さを示している。25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が25年6月統計で下げ止まりとなった後は底這い状況が続き、回復感が出にくい状況にある。


(訂正) 先月の勢い度算出において非鉄金属の勢い度に誤りがありました。47.8を43.5に修正、産業景気の勢い度が289.5から285.1に修正となります。これによる前月のレポートの分析判断には変更はありません。謹んで訂正、お詫び申し上げます。


<ポジティブ製品>

エポキシ樹脂、伸銅製品が良化、電子回路基板、固定コンデンサーが高伸

出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、合繊長繊維、炭素繊維、段ボール原紙、紙器用板紙、アンモニア、複合肥料、スチレンモノマー、合成アセトン、エポキシ樹脂、プラスチック製強化製品、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、合成ゴム、石けん、溶剤系塗料、プラスチック製容器、特殊鋼熱間鋼管、特殊鋼冷間仕上鋼材、電気銅、伸銅製品、機器用絶縁電線、板ガラス、遠心力鉄筋コンクリート管、専用機、研削盤、ダイヤモンド工具などであった。

こうした中で、生産・出荷が増加(前年同月比+10%超)した製品をピックアップすると、光ファイバー製品、アンモニア、再生・半合成繊維、アクリロニトリル、合成アセトン、洗顔用クリーム類、乳液化粧水類、ファインセラミックス(圧電機能素子)、装輪式トラクター、FPD製造装置、超硬工具、繊維機械、汎用内燃機関、コンベア、カメラ用交換レンズ、ロジック半導体、メモリー半導体、電子回路基板、固定コンデンサー、リチウムイオン蓄電池、半導体・IC測定機、軽トラック、小型トラック、航空機用機体部品、航空機用発動機部品などとなる。


<ネガティブ製品>

フェノール樹脂、トランジスターが悪化

出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、ニット製品、か性ソーダ、カーボンブラック、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、普通鋼鋼板、特殊鋼熱間圧延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム板製品、石油ストーブ、電気用陶磁器、遠心力鉄筋コンクリートパイル、建設用クレーン、栽培・収穫用機器、普通トラック、食洗器、トランジスター、精密測定機などとなる。

こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が10%以上減少した製品をピックアップすると、銑鉄、粗鋼、鋼矢板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛、石油ストーブ、飲料用アルミ缶、金属製継手、電気用陶磁器、炭素製品、石化用触媒、二塩エチレン、メタクリル酸エステル、フェノール、パラキシレン、ポリアミド系樹脂成形材料、製紙用パルプ、合繊短繊維、印刷機械、鋳造装置、カメラ、トランジスター、冷蔵庫、換気扇、アルカリ電池、デスクトップパソコン、フォークリフトトラック、時計などが挙げられる。


<勢い度のサイクルと株価>

短期的な過熱感も、勢い度、出荷・在庫循環からはまだ上昇余地

26年1月の株式市場は日経平均株価が前月末比5.07%の続伸となり、TOPIXも同4.19%の続伸と高値更新となった。業種別株価指数でセクター別に株価の優劣をみると、金、銀、銅の市況上昇を受け非鉄精錬株が買われ、AIサーバー関連の電線株も堅調であったことから非鉄セクターの株価指数が前月比18.87%の上昇となり、前月に続き上昇率トップとなり、AI関連の物色がロボット関連に波及したことから機械株が同14.37%の上昇となった。上昇率3位には窯業・土石(同8.88%)が躍進している。半面、前月比で下落したセクターはなかったが、ワースト3セクターは金属製品の前月比0.43%上昇、精密の同2.39%上昇、輸送用機器の同2.63%上昇であった。

“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行ってきたが、足元の状況は株価の底打ち段階の象限Ⅰから回復局面の象限Ⅱに入るところの動きにあり、想定以上の円安相場であったことを除くと、経験則からは上記のような株高を説明できない状況にある。以前からも言及してきたが過剰流動性、いわゆる米国を中心とする金余りによるバブル相場が日本に波及し、ボラタイルながらも強い上昇相場を形成しているとの懸念は残る。今後は米国関税政策の世界景気への影響による需要数量減速リスクを回避して持続的な物価上昇となれば、幅広い業種・企業のファンダメンタルズにはプラスに作用し、収益の押し上げ効果の高まりから業績相場による循環物色による持続的な株価上昇の素地が整うことになろう。“勢い度分析”と株価の関係性からは鉱工業出荷・在庫循環の象限Ⅲ~Ⅳへの移行に伴う産業景気勢い度の上昇が鍵となる。


CP&X勢い度レポート 産業景気の勢い度と株価





<勢い度分析による投資戦略>

海外投資家には要警戒もAI関連にまだ余力

製造工業生産予測指数からみると、12月の予測指数の実現率は1.2%と11月の▲3.3%からは揺り戻しとなった。この動きが当月の勢い度上昇に繋がったと判断する。機械の実現率が▲9.4%から16.0%となり、輸送用機器も▲4.5%から0.7%と前月分を取り戻し、電子部品・デバイスが4.1と上振れている。半面、非鉄、金属製品、紙パルプなどが予測を下回った。

生産予測指数は26年1月+9.3%(従来は+8.0%)、2月が▲4.3%となった。1月の大幅増としては輸送用機器、金属製品、電機、電子部品・デバイスが高い伸びとなり、減速を予測しているのは鉄鋼と情報通信機械の2セクターだけとなった。

個別製品での動きをみると、景気の先行指標となる伸銅製品の出荷が7ヵ月連続で前年同月比プラスとなり、出荷の伸びが在庫の伸びを上回る好循環の象限Ⅳに回復している。遅効性のある研削砥石が出荷▲4.0%から+2.0%となり、超硬工具が2桁の出荷増となるなど、産業景気の改善度度合いが伺える。

AI関連では光ファイバー製品が生産能力の限界によって能力増強投資との挟間に入るも出荷+13.5%、在庫+54.9%と意図的に在庫を積み上げながら需要増に対応している。またAI半導体需要に対応したマイクロンのHBM、キオクシアの3D-NANDの生産拡大が寄与しているメモリー半導体は出荷+23.9%、在庫▲25.8%と、一段と需給が引き締まった格好にある。固定コンデンサー、電子回路実装基板が前年比出荷増を回復し、AIデータ関連需要の波及による効果の高さを示している。

半導体市場は高価なAI半導体であるGPUの需要増で金額ベースでは2桁増が続いているが、そのベース素材となるシリコンウエハーはまだ恩恵に浴していない。AI半導体に使用するHBMの増産に追われ汎用のDRAMや3D₋NANDのメモリー半導体にも増産機運は高まってきており、シリコンウエハーも26年後半には回復の可能性が出てきている。これらの動きはバブルと産業構造変化との見方に二分する。2000年以降を振り返ると2000年のITバブル、2020年の半導体シリコンのスーパーサイクルとバブルを経験したトラウマでもあるが、AIの活用はこれから本格化する点からすると、バブルと判断するのは時期尚早であろう。

株式市場のリスクとしては高市政権の積極財政による円安、物価上昇、長期金利上昇が懸念材料となる。加えて、米国FRB次期議長候補として元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏が指名され、金融緩和の方向性には変化はないが、同氏がリーマンショック、コロナ禍で提供した過剰流動性の回収の必要性を唱える可能性もある。前月の当分析で「日本株の買い越し額はアベノミクス時の3分の1にとどまっていることもあり、更に拡大する余地を残している」との見方を示したが、株式市場への資金配分に変化があると状況が変わる可能性をリスクとして捉える必要がある。

当面の戦略として、AI関連の実体を伴う需要による成長の恩恵を受ける銘柄は、業績への反映度合いで選別が進む可能性があり、成長期待により買い上がってきた銘柄では調整リスクが高まると判断する。日本が金利上昇となる中では、低バリュエーション、株主還元余力の大きな財務体質を持つ企業への投資を推奨する。業種では出遅れ感が残る化学と精密、自動車関連となろう。



CP&X勢い度レポート セクター勢い度

補足:“勢い度”分析とは

鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。

縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

CP&X勢い度レポート 収益モメンタムサイクル

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。

8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。

(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)

 

留意事項

本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。

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