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CP&X Monthly Report 2026年1月号

| Title |

勢い度分析による産業景気と株価のサイクル


| vol |

2026年1月号

  

CP&X Investment Research

主席シニアアナリスト

 

Senior Analyst

黒澤 真

Makoto Kurosawa

 

| Date of Issue |

1/05/2026

 

 

Ver:20260105-1


 


CP&X 勢い度レポート


  勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。



<セクター勢い度と産業景気の勢い度>

7セクターの勢い度が下落

勢い度分析26年1月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業25年11月速報をベースに算出)は全8セクター中、上昇は前月に続き電機・精密の1セクターのみで、紙パルプ、化学、非鉄金属、窯業・土石の3セクターが下落となり、残り3セクターが横ばいとなった。セクター勢い度の低下は、素材製品の多くにおいて前年の出荷回復基調の下で秋需要が高水準であったのに対し、当月は米国関税政策の影響が緩和したが前年に比べると減少基調となったことが背景にある。

米国の相互関税が2025年4月に発表され、その後の交渉過程で猶予期間が設けられたことが25年4~6月の国内生産活動にプラスに作用し、特に6月統計、9月統計では前倒しの駆け込み需要による押し上げ効果があった。7月末には相互関税分の一律15%への引き下げで合意したことを受けて9月以降は積極姿勢に転じる業種・企業の動きがポジティブに作用した反動も相まって、前年同月比では関税の影響がない秋の需要期と比較すると素材セクターを中心に減速となった。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度

鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+1.1%から▲1.7%へと3ヵ月ぶりに減少となるも、在庫指数は▲1.9%から▲4.1%となり、出荷・在庫循環では回復初期の象限Ⅱから底打ちの象限Ⅰへの後退にとどまり、好循環を維持している。セクター別出荷指数で前年比プラスとなったのは電気機械と産業機械の2セクターだけとなり、プラスチック製品、電子部品・デバイス、情報通信機器、輸送用機器が減少に転じた。素材セクターの出荷指数は前年同月比減少基調の継続となったが、減少率が大きいのは非鉄、金属製品、紙パルプの6%以上の減少であった。

8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は289.5と前月比29.0㌽の低下となった。5ヵ月ぶりに300ポイント割れ、5ヵ月連続の前月比マイナスと基調は弱含みにある。25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が25年6月統計で下げ止まりとなり、その後は緩やかな回復基調にはあるものの、収益モメンタムの上がりにくい状況にある。


<ポジティブ製品>

石化川上製品が良化、光ファイバーが持ち直し

出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、合繊短繊維、合繊長繊維、ニット製品、純ベンゼン、純トルエン、キシレン、フェノール、エチレン、エチレングリコール、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド系樹脂成形材料、特殊鋼熱間圧延鋼材、亜鉛メッキ鋼板、アルミ製建具、ファインセラミックス(圧電機能素子)、炭素製電極、遠心力コンクリートパイル、建設用クレーン、普通乗用車、デジタルカメラ、アルカリ電池、カメラ用交換レンズなどであった。

こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が増加した製品をピックアップすると、再生・合成繊維、織物製外衣、大人用紙おむつ、か性ソーダ、石化用触媒、純トルエン、キシレン、ポリビニルアルコール、石けん、スチレンモノマー、ポリエチレン、鋼半製品、鋼矢板、普通鋼鋼板、特殊鋼冷延広幅帯鋼、伸銅製品、アルミ板製品、超硬チップ、電気溶接棒、光ファイバー製品、ファインセラミックス(圧電機能素子)、ファインセラミックス(パッケージ)、炭素製電極、電気銀、装輪式トラクター、ショベル系掘削機、マシニングセンター、産業用ロボット、FPD製造装置、半導体・IC測定器、産業用テレビジョン装置、軽トラック、航空機用機体部品、航空機用発動機部品、リチウムイオン蓄電池、デジタルカメラ、カーオーディオなどとなる。前月までのレポートでは9%以上増加した製品をピックアップしてきたが、急減しているため出荷増の全製品を記載している。



<ネガティブ製品>

ポリプロピレン、安全ガラス、カーエアコンなどの自動車用部材、パソコンが減速

出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、綿・毛織物、合繊長繊維織物、染色整理、乳幼児用紙おむつ、複合肥料、酢酸ビニルモノマー、エチレングリコール、アクリロニトリル、ウレタンフォーム、ポリアミド系樹脂成形材料、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、合成ゴム、プラスチック製建材、発泡プラスチック製品、特殊鋼熱間交換、銑鉄鋳物、アルミ製押出製品、伸銅製品、電力用電線・ケーブル、産業用アルミ製品、板ガラス、安全ガラス、ガラス短繊維製品、専用機、二輪車(125㏄超)、一般冷空調用冷凍機、システムキッチン、管楽器、繊維板・パーティクルボードなどとなる。

こうした中で、生産・出荷(前年同月比)が10%以上減少した製品をピックアップすると、炭素繊維、不織布、製紙用パルプ、乳幼児用紙おむつ、二塩化エチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸(モノマー)、パラキシレン、ポリアミド系樹脂成形材料、ふっ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、複合肥料、印刷インキ、日焼け止め化粧品、アスファルト、プラスチック製パイプ、銑鉄、粗鋼、小形棒鋼、冷間ロール成形形鋼、特殊鋼冷延鋼板、特殊鋼熱間圧延鋼管、電気金、亜鉛、アルミはく、板ガラス、安全ガラス、ガラス長繊維製品、道路用コンクリート製品、軽量コンクリート製品、タイル、衛生用陶磁器、ファインセラミックス(一般構造材)、印刷機械、旋盤、研削盤、金型、機械プレス、一般冷空調用冷凍機、混成IC、標準変圧器、冷蔵庫、換気扇、カーナビ、乗用車用エアコン、デスクトップパソコンなどが挙げられる。



<勢い度のサイクルと株価>

勢い度分析から見た株価は上昇の序章段階

25年12月の株式市場は日経平均株価が前月末比0.99%の上昇となり、TOPIXは同1.32%の上昇となった。日経平均株価は11月にAI関連株価の急上昇による高値警戒感から前月末比で9ヵ月ぶりの下落となったが、12月はAI・半導体関連株の持ち直しから上昇に転じ、株価の底堅さを示した。出遅れバリュー株の見直し買いもあり、TOPIXは9ヵ月連続の上昇となった。株価は海外投資家の見直し買いもあって25年1年間では日経平均株価が27.2%の上昇となり、TOPIXも22.9%の上昇と活況であった。

業種別株価指数でセクター別の株価の優劣をみると、25年1年間では非鉄が105.6%の上昇となり、電機が30.1%、機械が28.6%、ガラス・土石が25.6%、紙パルプが23.4%とそれぞれ上昇した。キオクシアを筆頭とするAI・半導体関連株が高騰し、AIサーバー関連が2年連続で高い上昇となった。製造業の株価は精密の2.7%上昇が最も低かったが、全セクターで上昇となった。足元の12月の業種別株価は輸送用機器の前月末比4.3%上昇を筆頭に、紙パルプの3.8%、非鉄の3.3%が続き、下落は機械の1.3%と繊維の0.6%の2セクターとなった。

株価上昇の要因はファンダメンタルズに依存するだけではなく、海外投資家の日本株回帰によって買い越し額が5兆円超と12年ぶりの高水準になったことや、個人投資家もNISAを通した投資意識の高まりによる好需給にある。“勢い度分析”は数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行ってきたが、足元の状況は株価の底打ち段階の象限Ⅰから回復局面の象限Ⅱに入るところでの動きにあり、円相場が想定以上の円安であったことを除くと経験則からは上記のような株高を説明できない状況にある。今後は米国関税政策の世界景気への影響による需要数量減速リスクを回避し持続的な物価上昇となれば、幅広い業種・企業への収益、ファンダメンタルズの押し上げ効果が高まり、業績相場からの循環物色による持続的な株価上昇の素地が固まり、“勢い度分析”と株価の関係性も回復しよう。


CP&X勢い度レポート 産業景気の勢い度と株価





<勢い度分析による投資戦略>

海外投資家とAI関連にまだ余力

製造工業生産予測指数からみると、11月の予測指数の実現率は▲3.3%と、10月の▲1.7%から一段の悪化となった。米国との関税交渉の進展により関税の影響度合いも読み易くなり、影響度合いが軽減するとの方向が実現率の高まりに寄与したとみられたが、予想に反し機械の実現率が▲9.4%、輸送用機器が▲4.5%と悪化するなど、再び認識ギャップが高まった。生産予測指数は12月が+1.3%(従来は▲2.0%)、26年1月が+8.0となった。12月は機械が▲11.8%、情報通信機器が▲3.8%、電子部品・デバイスが▲0.9%と減速が予想されているが、電機が+6.0%、非鉄が+5.6%となり、電子部品・デバイスのマイナス予想の縮小などからプラスになる。1月は機械、輸送用機器が2桁の大幅増と、電子部品・デバイスのプラス転換などから大幅増の計画となっている。

個別製品での動きをみると、景気の先行指標となる伸銅製品の出荷が6ヵ月連続で前年同月比プラスとなるも、遅効性のある研削砥石が出荷▲4.0%となり、ミックスの状態である。またAI関連では光ファイバー製品が生産能力の限界による能力増強投資との挟間に入るも出荷が+17.9%、在庫が+21.7%と、意図的に在庫を積み上げながら需要増に対応している。またAI・半導体需要に対応したマイクロンのHBM、キオクシアの3D-NANDの生産拡大が寄与しているメモリー半導体は出荷が+8.6%、在庫が▲10.2%と好需給にある。電子部品はウインドウズ10のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要増に対応した増産の一巡などから固定コンデンサー、コネクター電子回路実装基板が前年比減産と踊り場にあるが、電子部品需給の指標となるトランジスターが出荷3.4%減、在庫7.8%減と出荷・在庫循環の象限Ⅰにとどまっており、下記のようなAIサーバー関連での電子部品需要も高まる方向にあり、強い基調を回復する可能性は高いとみられる。

米企業のAIデータセンターのサーバー投資は25年に約70兆円弱、前年比では60%強の高い伸びになる見込みであるが、現状で計画されている26年の投資額は30%強の伸びが見込まれている。光ファイバー製品などのように部材メーカーの想定を上回る伸びで早期の追加投資を余儀なくされる点でモメンタム減速は一時的となり、先行する企業はもちろんこれまでにない未曾有の需要を手にするところが多く出てくる可能性がある。また、AI関連需要はサーバー構築や最先端半導体製造のための部材が注目されてきたが、投資の拡大に伴い電子部品や電子材料での収益貢献度の高まりや、AIを活用した自動運転やロボットなど機械・装置での貢献をはじめ幅広い分野への波及にも注目できる。

株式市場のリスクとしては高市政権の積極財政による円安、物価上昇、長期金利上昇が懸念材料となる。ただ、海外投資家は資本コストを意識した経営、継続的な賃上げによる日本の成長性復活に期待しており、それを裏切らないような状況であれば、日本株の買い越し額はアベノミクス時の3分の1にとどまっていることもあり、更に拡大する余地を残している。低バリュエーション、株主還元余力の大きさからAIサーバー関連部材、電子部品・半導体関連部材を手掛ける企業が多い非鉄、化学、窯業・土石を中心とした素材セクターが引き続き注目できよう。



CP&X勢い度レポート セクター勢い度

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補足:“勢い度”分析とは

鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。

縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

CP&X勢い度レポート 収益モメンタムサイクル

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。

8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。

(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)

 

留意事項

本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。

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