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CP&X Monthly Report 2026年4月号

  • 2 日前
  • 読了時間: 10分

| Title |

勢い度分析による産業景気と株価のサイクル


| vol |

2026年4月号

  

CP&X Investment Research

主席シニアアナリスト

 

Senior Analyst

黒澤 真

Makoto Kurosawa

 

| Date of Issue |

4/03/2026

 

 

Ver:20260403-1


 


CP&X 勢い度レポート


  勢い度分析は鉱工業統計に採用される製品の出荷と在庫の循環を前年同月比でみることにより、関連セクターの収益・関連市況のモメンタムの動向を分析する。これに合わせて株価の位置を相対的に割高か割安かも比較することでセクターアロケーション、更には銘柄ピックアップの一助となることを目標としています。



<セクター勢い度>

紙パルプ、鉄鋼、窯業・土石の3セクターが上昇

勢い度分析26年4月号におけるセクター別の勢い度(鉱工業26年2月速報をベースに算出)は全8セクター中、紙パルプ、鉄鋼、窯業・土石の3セクターが上昇となり、残る5セクターが下落となった。旧正月の期ずれの影響で1月統計では7セクターが上昇したが、当2月統計ではその反動からの低下となった。繊維が続落したが、紙パルプ、鉄鋼は下げ止まり感による上昇となった。電子部品・デバイス、電気機械、産業機械(含む半導体製造装置)や自動車の出荷数量は堅調であったが、セクター勢い度は前年同月比では前年の水準が高く、出荷の伸びが鈍化したこともあり低下となった。


CP&X勢い度レポート セクター勢い度

<産業景気の勢い度>

8セクターのセクター勢い度を合算した産業景気の勢い度は343.6と前月比55.2㌽の下落となった。1月と2月の合算値では10.5㌽の上昇となり、産業景気の勢い度は緩やかな回復基調となる。25年1月の戻り高値をピークにした低下基調が25年6月統計で下げ止まりとなった後は底這い状況が続き、回復感が出にくい状況にあったが、トランプ関税の動向による影響から脱し再び回復経路を登り始める兆しが見える段階となった。


鉱工業出荷・在庫指数(原指数、前年同月比)では、出荷が+1.2%から▲0.2%とブレーキがかかった格好にあり、在庫指数は▲4.3%から▲3.4%となり、出荷・在庫循環では回復初期の象限Ⅱから底打ちの象限Ⅰに後退した。需給バランス面では悪化はないがモメンタムは3ヵ月ぶりの後退となった。セクター別では電気機械、電子部品・デバイスと産業機械の出荷指数が連続増となり、窯業・土石、輸送用機器の出荷指数が出荷増に転じている。なお、2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃の影響に関しては後述する。

 


<ポジティブ製品>

鉄鋼製品の良化は値上げ前の駆け込み需要の側面も

出荷・在庫サイクルで好循環の象限に移った良化製品を挙げると、新聞用紙、自動車排ガス浄化用触媒、ポリカーボネート、合成洗剤、H形鋼、普通鋼鋼板、普通鋼冷延電気鋼帯、特殊鋼熱間鋼管、特殊鋼冷延仕上げ鋼材、銑鉄鋳物、アルミ押し出し製品、機器用絶縁電線、ばね、ガラス短繊維製品、電気用陶磁器、ファインセラミックス(構造材)、不定型耐火物、複写機、カーナビなどであった。

 


<ネガティブ製品>

伸銅製品、光ファイバー製品は出荷増も在庫増から悪化に

出荷・在庫サイクルで調整循環に後退した製品は、合繊短繊維、染色整理、ニット製製品、アンモニア、パラキシレン、スチレンモノマー、エチレングリコール、ブタジエン、アクリルニトリル、ポリビニルアルコール、界面活性剤、溶剤系合成樹脂塗料、鋼半製品、普通鋼鋼帯、普通鋼冷延広幅鋼帯、亜鉛メッキ鋼板、電気金、アルミ板製品、伸銅製品、光ファイバー製品、食缶、産業用アルミ製品、セメント、衛生用陶磁器、道路用コンクリート製品、数値制御旋盤、マシニングセンター、ダイヤモンド工具、軽乗用車、小型乗用車、普通トラック、セパレートエアコン、電動工具、トランジスター、ムーブメント、精密測定器、システムキッチンなどであった。


 

<勢い度のサイクルと株価>

長期的にはポジティブな面も

26年3月の株式市場は中東情勢の緊迫化による原油市況高に伴うスタグフレーションのリスクの高まりから、日経平均株価が前月末比13.56%下落と4ヵ月ぶりの調整となり、TOPIXは同11.19%下落と前月末比では1年ぶりの下落となった。3月の株式市場は精密が前月比6.33%の下落で最小の下落率となった以外は前月比10%超の下落となった。中東情勢悪化の影響を大きく受けたのは、これまで上昇率の高かった銘柄の利益確定売りに押されたAIデータセンター・先端半導体関連材料・装置関連の非鉄(TOPIXセクター指数で前月比▲16.92%)、機械(同▲17.52%)であったのに加え、意外にも米国関税政策の緩和による回復期待が高まっていた輸送用機器(同▲16.92%)の下落率も大きかった。


この1年間では日経平均株価が43.37%の上昇、TOPIXが31.56%の上昇となった。セクター別のパフォーマンスでは非鉄の239%の大幅な上昇を筆頭に、30%超の上昇となった窯業・土石、機械、電機が続いた。半面、輸送用機器、鉄鋼が3%台の上昇にとどまり、金属、繊維が13%台の上昇と、インデックスに対し大幅なアンダーパフォームとなった。


“勢い度分析”では数量ベースの出荷・在庫循環及びそのバランスから収益モメンタムの立ち位置を確認し、その方向性と相対株価との関係性から投資判断を行ってきたが、足元の状況は株価の底打ち段階の象限Ⅰから回復局面の象限Ⅱに入るところで一進一退の動きにあり、円相場が想定以上の円安であったことを除くと経験則からは上記のような株高を説明できない状況にある。バブル状態にあった株価も、今般の米国・イスラエルによるイラン攻撃に伴うホルムズ海峡の実質的封鎖という最大のリスク要因である地政学的問題を背景に調整局面となったが、良い方にとれば長期的な株価相場にはガス抜きになったとも言えよう。


中東情勢のリスク緩和が今後のポイントとなり、まだ予断できる状況ではないが、そのタイミング次第では“勢い度分析”と株価の関係性から鉱工業出荷・在庫循環が象限Ⅲ~Ⅳの拡大局面へと移行し、産業景気の勢い度の上昇と循環的な収益・株価上昇の相関関係が回復するという先行きの明るい見方もできる。


CP&X勢い度レポート 産業景気の勢い度と株価





<勢い度分析による投資戦略>

中東情勢安定後の収益回復のタイミングとその度合いがポイント

製造工業生産予測指数からみると、2月の予測指数の実現率は▲1.3%で1月の▲2.5%からやや改善となった。今後の見通しは3月が+3.8%、4月が+3.3%と楽観的な予想となっている。3月の予想指数でマイナスを見込んでいるのは、2月の実現率が高かった情報通信機器に加え、化学及び金属製品と、中東からの原料調達懸念のある3セクターだけで、4月にはそれらのセクターも含め前月比プラスの予想となっており、調査時期の問題もあるが米国・イスラエルとイランの交戦状態は短期間で収束すると想定した格好であり、4月を超えての長期化の影響は反映されていないとみられる。


ホルムズ海峡の実質的封鎖による原油・ナフサ調達難に対しては中東以外からの調達を踏まえ大幅な不足状態に至るリスクは低いが、市況高は当面続くことになり、新興国ほどその影響は大きく、世界経済の低迷によるスタグフレーションのリスクは拭い切れない。ガソリンなどは補助金で価格上昇を抑えられているが、石化製品は内外市況の逆転から国産ナフサ価格に基づくフォーミュラ制により原燃料高を1ヵ月内に転嫁するサーチャージ制が採用され始めている。仮に5月中に収束したとしても中東地域の原油関連設備修復などの問題が残り、世界経済、企業収益は全治1年以上の重症状態が続く可能性が高いとも言えよう。


今後の収益状況を見るうえで、これまで個別製品の生産・出荷の増減の大きさをピックアップしてきたが、先行き不透明な中ではその意味合いはないため、製造業サプライチェーンでの在庫率の水準を参考としたい。


原油関連の2月の在庫率(在庫数量/出荷数量)はガソリンが0.22ヵ月、ナフサ、重油が0.49ヵ月であり、石化でもエチレンが0.15ヵ月、プロピレンが0.26ヵ月、スチレンモノマーが0.5ヵ月、ブタジエンが0.26ヵ月と、需要連動での生産もあり、川上での在庫は余裕がないのが実態で、在庫は中間段階の樹脂として保有されており、ポリエチレンが2.8ヵ月、ポリプロピレンが2.3ヵ月、ポリスチレンが2.4ヵ月、塩ビ樹脂が1.53ヵ月となっている。4月以降、原油の備蓄活用に加え、ナフサも中東以外からの調達で数量的なリスクは限定的となるが、海外ナフサ市況は倍以上に上昇しており、サーチャージ制の採用で4月中旬から樹脂価格転嫁が始まる。それを使用したフィルム、プラスチックボトルの中空プラスチック容器が1.17ヵ月、食品容器や断熱材などで使用される発泡プラスチック製品が1.16ヵ月の在庫にとどまり、容器などの樹脂加工製品は早期の値上げが待ち受ける格好だ。原油市況が1バレル70ドル以下に下がらないと26年度は原料高が継続する格好となり、川下の樹脂加工の収益は原料高と需要の両面からの圧力が続くことになる。


中東のアルミ供給制約があるアルミニウムでは板製品が0.62ヵ月、はくが0.79ヵ月の低水準であり、飲料用アルミ缶が2.03ヵ月、サッシなどのアルミ建材が0.76ヵ月の状況にある。

紙パルプではティッシュやトイレットペーパーなどの衛生用紙の在庫が0.65ヵ月、梱包用段ボールシートは0.33ヵ月であるが、エネルギー市況の上昇がネガティブ要因として残るものの、原料のチップ・パルプの調達元は北米、南米、豪州などであり、国内のパルプ在庫も1ヵ月分以上あるため供給に問題はない。


石化製品、紙製品はイラン攻撃前から原料高の価格転嫁過程にあったが、3月以降には鉄鋼製品も値上げが始まっていた。ただ在庫は川上の粗鋼、鋼半製品の段階に多く抱える構図にあり、H形鋼が0.79ヵ月、冷間ロール成型軽量形鋼が0.79ヵ月、亜鉛メッキ鋼板が0.9ヵ月と鋼材での在庫水準が低位にあり、価格是正が一気に進む可能性が高まっている。


その他の業種、製品では成長性が高く増産方向にある光ファイバー製品が1.53ヵ月、研削砥石も1.5ヵ月と国内の平均的な在庫率の2ヵ月前後に収まっている。在庫水準が相対的に低い製品をピックアップすると印刷インキの0.92ヵ月、か性ソーダの0.63ヵ月、合成洗剤の0.44ヵ月、ファインセラミックス(パッケージ)の0.7ヵ月などが挙げられる。半面、在庫率の高い製品としては酸化チタンの6.1ヵ月、合成ゴムの3.49ヵ月、ガラス長繊維製品の3.32ヵ月などが挙げられる。

以上のように、在庫水準からみると中東情勢が3ヵ月以内に収束すると想定した場合の収益への影響は、値上げの浸透度合いにもよるが9月前後まで、つまり27/3中間期までの調整に収まる可能性が高い。しかしホルムズ海峡の封鎖状態が4ヵ月以上の長期化となると影響は計り知れないものになる可能性がある。



CP&X勢い度レポート セクター勢い度

補足:“勢い度”分析とは

鉱工業統計の算出対象製品の出荷・在庫の前年同月比の相関関係を8つの象限に分け、製品需給による収益モメンタムを推計。その8つの象限と市況、株価との相関関係を見ることで素材セクターへの投資タイミングを計ることを目的に開発した。

縦軸に出荷の前年比、横軸に在庫の前年比をとり出荷と在庫の相関関係を象限Ⅰ~Ⅷに分類し、関連企業の株価、製品市況との関係性を検証。その結果、象限Ⅰ(出荷の前年比減少率<在庫の前年比減少率)は在庫調整が完了し、市況が下げ止まりから値上げが可能な環境が整い、収益モメンタムも底打ちとなり、株価も底打ちの可能性が高まる。回復・拡大サイクルのボトムとなる。

CP&X勢い度レポート 収益モメンタムサイクル

一方、象限Ⅴ(出荷の前年比増加率<在庫の前年比増加率)は意図しない在庫の積み上がりにより、収益モメンタムがピークアウトの確率が高い状況で、株価もピークとなる確率が高い。以上のような手法から、象限Ⅰ~Ⅳが底打ちからピークの好循環、その反対側に位置する象限Ⅴ~Ⅷが調整サイクルと定義する。セクター勢い度は各セクターのサンプル製品の中で、象限Ⅰ~Ⅳに入っている製品の単純な構成比で表わされ、各セクターの勢い度は温度計のようにゼロ~100の間で変動、その数値の高いほどモメンタムが強いことを示す。当分析では素材6セクターと加工・組立産業を機械・輸送機器と電機・精密の2セクターに大別し、合計8つのセクターの勢い度を毎月算出している。

8つのセクター勢い度の単純合算値を産業景気の勢い度として算出(0~800の間で変動)し、製造業全体の勢い度として株価指数全体との比較に使用している。

(分析、筆責:黒澤 真、CP&X)

 

留意事項

本資料は、情報提供のみを目的として各種のデータに基づき作成したもので、投資勧誘を目的としたものではありません。また、この資料に記載された情報の正確性および完全性を保証するものでもありません。この資料に記載された意見や予測は、資料作成時点の見通しであり、予告なしに変更することがあります。この資料の著作権はCP&X Investment Researchに帰属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送、配布、配信等を行わないようお願いいたします。

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